トコロテン 

 夏が来れば思い出す〜♪ではありませんが。(笑)
夏が来れば思い出すのがトコロテンです。トコロテンの原料ってご存知ですか?
天草(テングサ)と言う海草とお水で作られています。夏になると海へ連れて行ってもらいましたが、どうも水と戯れるのがあまり好きじゃなかった・・・。と言うよりも水着が水で濡れるのが事の他嫌いだったと言う変わり者だったわけでして。砂浜で水と戯れるよりは、岩場で貝や逃げ送れたカニを追いかけるのが楽しみだった。そんな頃、父はPに海草を採るように教えてくれた。岩場に打ち寄せられていた紫がかった茶色い海草をビニール袋に一杯採った。これがとても楽しかった。勿論岩場にくっついている巻貝など(ニナガイ・ガンガラ・岩カキ・ムラサキイガイ)も沢山採った。この貝類は綺麗に洗って、お水とお醤油で煮て爪楊枝でほじくって食べたがすごく美味しかった。これも大切な夏のおやつとなった。

しかし、ビニール袋に一杯採った海草はおやつに出てこなかった。はて???
これは、バケツに入れて、何度も何度も水を替えつつ、揉み洗いして干していた。しかも、乾いたらまたバケツに入れて何度も何度も水を替えてまた干しての繰り返しをする。そしたら紫がかった海草が白くなってゆくので驚いた。匂いを嗅ぐとほんのりと磯の香がして、なんとも心地よい。真っ白になってカラカラに乾いた海草をビニール袋に入れて保存した。父は仕事のお休みになる日にその海草を一つまみ取りだし、鍋に入れて水を注ぎ火に掛けた。ぐつぐつと水が沸騰するまで箸で揺すると海草がだんだん溶け出して透明になってくる。これを布巾で丁寧に漉して弁当箱に注いで冷蔵庫で冷やしてくれる。どこで調達して来たのか、木の切れ端で上手く箱のような物を作った。これが後にトコロテンの突き出しだと判ったのだが、その頃はまだ良く知らなかった。冷蔵庫で冷えた弁当箱を取り出して、中の白っぽく固まった「物」を取りだし、木の箱に入れ、水鉄砲のお化けのような物で突くと、するすると透明なおうどんのようなのが出てきた。これがトコロテンだった。

父は酢醤油で、母は黒蜜を掛け、Pは勿論甘い黒蜜を掛けて食べた。これが冷たくて甘くて、黒蜜のコクが引き立って美味しかった〜。(b^ー゚)♪グッ!
父は「黒蜜を掛けるのは邪道だ!」と言うけれど、あの冷たくて甘い食べ物はPのおやつとしては最高だった。まだお菓子が今のように豊富にあったわけではない時代のことだ。

成長して中学生になったPは、水着を濡らしても平気になったが、やはり海で泳ぐことはあまりなく、海草や貝をあいも変わらず採っていたが、その頃同じクラスになった友人の家へ遊びに行って驚いた。テングサは「寒天」と名前を変えて?スーパーで売られている事を教えてもらった。しかも、その友人のお母さんは、ガラスの深めのお皿に餡を置き、その上に缶詰のみかんを乗せ、その上に寒天を水で煮溶かし、お砂糖を入れて注ぎ冷やして下さった。遊んでいる間に冷たく冷えたそれはとてもオシャレに目の前に出された。これにはすごく驚いた。綺麗だった。そして複雑になった味で、磯の香は全くしなくて、これが同じテングサから出来ているのかと・・・。磯の香のするテングサと磯の香のしない寒天。同じ物には到底見えないが、その食感は同じであった。それから幾年月・・・。今でも夏になると思い出すおやつの一つである。

              03.8.14 P-SAPHIRE

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