*- 冷たい雨 その3 -* *−−−−*−−−−*−−−−*−−−−* 着る服も決まらずに、とうとうその当日になってしまった。私っていつ
もそう。決断力が無いって言うか、迷い始めたらキリが無いって判ってい る癖に決められない。だからきっと、吉田さんのあの強引さが気持ち良か ったのかも知れない。結局寒がりの私は、茶色のコールテンのズボンに白 のセーターとこげ茶の長いコートを着て出掛けることにした。待ち合わせ の病院の自動ドアに映った姿は、自分で見ても色気なんてとてもじゃない けど一切無く味気ないように見えた。やせ我慢でもスカートにすれば良か った・・・少し後悔をしつつ横を向いたら、吉田さんが側に立っていた。 「あれ?自動ドアには映って無かったよ?」キョトンとした私を見て、彼 はまたあの人懐っこい笑顔で「そりゃそうだよ〜、なんてったって僕はお 化けなんだから。アハハ、さ、行こう!」彼はいきなり私の腕をつかんで また強引に誘った。駅から山へ向かう電車に乗り、5つ目の駅で降りた。 スタジアムでは、もう沢山の人が列を成していたが、彼はチケットを持っ ているからと、別の予約席専用へと進んだ。「ねぇ、試合って、なんの試 合?」「あれ〜〜聞いてなかったのか?アメフトだよ、ア・メ・フ・ト」 「ごめんなさい。覚えてなかったのよ、だってあの時・・・」「そんな事 はいいから、席に座って座って!僕はコーラーを買ってくるから。中本さ んもコーラーで良かったかな?」「え?あ、はい・・・」彼は大急ぎで走 り出して、コーラーを二つと、ポテトチップスを買って帰ってきた。「こ の寒いのにコーラー?」私は言いたかったけど、言えなかった。別に迷っ たワケじゃない。彼の強引さを楽しんでいたのかも知れない。 アメフトの試合は、ルールが全く判らず、隣に座っている彼の発する声 で、点が入ったんだとか、点を入れられたんだと判る程度だったが、汗を かかんばかりに応援している彼を見ていると、なんだか幸せ気分になって 試合の後半では私も、大きくは無いけれど声を出して応援していた。寒い だろうと思ってズボンにしたけど、応援をしていたら身体が熱くなってき て、やっぱりスカートにすれば良かったと、また後悔をした。知らないス ポーツなのに、こんなに楽しめるんだ・・・。意外な楽しみを貰った。 |
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