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小説 〜 いつも心に花束を 〜
(4)
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  赤く光る物が目に飛び込んできた。しかも、ひとつやふたつではない。無数に
ある。私はある期待感に招かれて、草を手で押し広げながら、その赤く光る物を
手にとってみた。なんとそれは、小さなイチゴ。一粒口に放り込んで噛んでみる
と、酸っぱくてそれでいてスッキリとした甘みとイチゴの香りがした。日本で売
られている大きなイチゴの甘みに比べれば、酸っぱ味が強いけれど今は兎に角、
洗面器一杯食べたいと思った。と、途端に納屋に置いてきぼりにしたラネの事が
気になった。だって、昼食もまだ食べていなかったんですもの、きっと空腹でご
機嫌斜めになっているかも・・・。木に干した布はまだ乾いていない。辺りを見
回しても誰も通らない田舎町。濡れて重たくなった布を担いで帰るより、そのま
まに干して置く方が得策だと思い、私は来た道を小走りに戻った。

 「ラネ、ラネ!とても素敵な物を見つけたのよ。何だと思う?イチゴよ。」
 「さくら、質問するのは良いけど、僕が考えるよりも先に答えを言うのは得策
  じゃないと思うけど、どうかな?」
 「アハハ、ごめんなさい。早く知らせたかったのよ、だって嬉しかったんです
  もの。」
 
 ラネはそっと私のおでこにキスをして、こう言った。
 「奥様、御覧下さいませ」

ラネが指差す方向を見てビックリした!!私が川で洗濯をし、イチゴを食べて
いる間に、なんとラネは簡易トイレを作ってくれていたのである。出掛けにイス
とバケツを探して欲しいと言った私の意図を、トイレだろうと直感的に察知して
ラネは腕組をしながら考えて作ってくれていたのである。

 「まぁ〜ラネ、素敵じゃない!これでトイレの心配がなくなったわね!」
 「だろう〜、女性に外で用を足せだなんて言えないもんな〜」

 ラネは頭を照れくさそうに掻きながら言った。さっき洗った大きな布で、トイ
レのぐるりを隠せば、きっと素敵だろうと思った。古ぼけたイスの真ん中を上手
く切り取り、座って用をたせるように工夫をしてくれていた。これなら楽チン!
座っても痛くならないように、ドーナツ型のクッションでも作ろうかしらと、私
はわくわく心をときめかせていた。

 「ラネ、イチゴを摘みに行って来るわ。何か入れ物があると嬉しいんだけど」
 「あっと・・・摘み草をする籠があったよ、待ってて」

 持ち手が些か心もとないが、なんとかイチゴの重さぐらいなら大丈夫そうな籠
をラネが持ってきてくれた。その籠を持って、またさっきの小川に戻り、私は一
生懸命イチゴを摘んだ。イチゴだけではお腹は満腹にはならないだろうが、今は
そんな贅沢を言っている場合じゃない。私はバッタのように、草むらをあちらこ
ちらと動き回って、籠に一杯のイチゴを摘み終え、夏の太陽と乾いた風にさらさ
れて、すっかり乾いている大きな布を背中に背負って、我が家へ帰って行った。

 「さくら、お帰り。さくら・・・目をつぶってごらん」
 「え、何?」
 「いいから、早く目をつぶってごらんよ」
 「何か知らないけど。はいはい。」
 「ワン・ツー・スリー!もう目を開けていいよ」

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