*- 冷たい雨 その1 -* *−−−−*−−−−*−−−−*−−−−* 冷たい雨にうたれて 街をさまよったの もうゆるしてくれたって いい頃だと思った 部屋にもどって ドアをあけたら あなたの靴とだれかの赤い靴 だけど信じられない 突然の出来事が こんな気持のままじゃ どこへも行けやしない 彼女の名前 教えないでね うらむ相手はあなただけでいい 涙こぼれるように 時もこぼれてゆくわ 指と指のすきまを そしていつか忘れたい 詩:荒井由美 *----*----*----*----* 一流とまでは言えないけれど、大学受験になんとか滑り込み、ホッとし
たのか、風邪を拗らせてしまって、近所にある病院で診察をして貰いに行 った。もうすぐ三月だと言うのにまだまだ外は寒く、受付の暖房の暖かさ がとても嬉しく感じ、待合室でお年寄りの話を聞くとはなしに雑誌をめく り、あまり興味も無い芸能ニュースをただ目で追っていると、看護婦さん の声が私の名前を呼んだ。「中本さん、中本頼子さん、診察室へお入り下 さい。」「はい・・・」読みかけの本を棚に仕舞って、診察室へと向かっ た。無精ひげの先生が、何か話していたが、熱のためか頭がぼーーっとし てしまっていて「・・・とりあえず点滴を受けてもらいましょうね」とだ け聞き取れた。「え?点滴???嫌だな・・・」そう心で思いつつ、ベッ ドに横になり、ほぼ1時間点滴を受けた。その間の事は覚えてない。きっ と熱でうとうととしてしまったのだろう。針を抜いた痛みで我に返り、処 置して貰う間中、天井ばかりを見ていたような気がする。薬を受け取り、 受付でお金を支払い、その場から立ち去ろうとした時、どこからか声が 聞こえてきた。「・・・さ〜ん、中本さ〜ん、診察券忘れてますよ〜」 なんともトボケタような声。ふと振り返ったら、隣の男性が診察券を見な がらしきりに私の名前を呼んでいた。「あ、すみません・・・」点滴をし て貰っている間寝ていたものだから、まだ頭がぼーーっとしていたらしい 。受付のテーブルに、診察券を忘れてしまっていたようだ。私は、丁寧に お礼を行って外に出た。さっきまでの暖かさが一気に冷え込むような外気 。さすがにぼーーっとしていた私の頭も、いやがおでも正気に戻してくれ た。 |
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