<繁縷:ハコベ>について
新年が明けて、日中ほっこりと暖かく感じられるようになる2月末頃から、道の隅っこや畑のそこかしこに真っ白の小さな花の群生が見られます。ハコベ・・・春の七草にある<ハコベラ>がそれです。七草粥に入れる時はまだ花が咲いていないので、どれがハコベラかわからないと言われますが、花を一度見れば忘れられなくなります。とても可憐な白い花です。
春の七草に入っている事は良くご存知で、食べてもおられると思いますが、七草粥以外で食べたと仰る方は(年配者を除いて)少ないのではないでしょうか。畑や庭の厄介者として抜いてゴミに出されてしまうのが関の山。でも待って下さい!!これ、とても役立つ草なんですよ。(笑)
実は、ハコベは<生薬>でもあるんです。繁縷(はんろう)という生薬名があり、タンパク質、ビタミンB,Cなどを豊富に含んでいます。また、薬効は、催乳作用(母乳の出がよくなる)、利尿作用、浄血作用があると言われ、乾燥して粉にしたものに塩を加えた物は「ハコベ塩」と呼び、歯ぐきの出血や歯槽膿漏の予防、また、歯磨き粉としても使われます。
茎が細くて、見た目には筋ばかりで硬そうに思われますが、花が咲いていても茎が堅くならず、塩ひとつまみ入れたお湯でサッと茹でて冷水で洗い、3cmほどの長さに切って、和え物、卵とじ、すき焼き、汁物の具など、幅広く使えます。春の草と言うと、やや苦味があるだろうと思われがちですが、これは全くアクも苦味もクセもありません。食感で言うと・・・貝割れ大根。(笑)そのイメージで捉えて頂けたら、ほぼ間違いは無いと思います。
ハコベには、ミヤマハコベ、ミドリハコベ、コハコベ・・・などなど、沢山の種類があります。どれも良く似ていて、ほとんど見分けがつきませんが、どれも同じようにして食べる事が出来ますので、安心して食べて頂いて構いません。
繁縷とは、なんとも難しい漢字ですね〜。これにも意味があって、茎が糸(縷:る)のように繁ることから名前がついたとされています。縷:る・・・とは、細々と連なる糸筋の事で、細く途切れずに続くさま。こまごまとしたさま。の意味があります。
日本現存最古の薬物辞典である<本草和名:ほんぞうわみょう(918年?)>には、波久倍良(はくべら)として記載されていますが、万葉集などには全く詠まれていません。現代と同じで、あまりにも身近にありすぎて、歌に出来なかったのかも知れませんね。って、これはあくまでも私の考えですが。
これから秋になるまで、このハコベは次々に花を咲かせます。皆さんが飛鳥においでになる頃、きっとそこここで出迎えてくれるに違いありません。見つけたらしばし足を止めて、可憐なお花を見てやって下さいね。
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