×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。


*- 小説:<元気を出して> -*
*−−−−*−−−−*−−−−*−−−−*

 涙など見せない強気なあなたを
そんなに悲しませた人は誰なの?

幸せになりたい 気持ちがあるなら
明日(あした)を見つけることは とても簡単

少し痩せたその体に似合う服を探して
街に飛び出せば ほら みんな振り向く

人生はあなたが思うほど悪くない
早く元気だしてあの笑顔を見せて
<竹内まりや:作詞>
*----*----*----*----*

  若くして結婚をした私は、まだ20代だと言うのに子育ての真っ最中。

毎日子供の将来の為に少しでも学資を稼ぐ為に、朝早くからそれこそ夜中

まで内職をしながら、子供を育てていた。着る服といえば、トレーナーとGパ

ン。これが1番機能的で楽!!化粧は、子供と肌を接する為に出掛ける時

以外はほとんどしない状態。伸び放題の髪の毛は黒いゴムで束ねているだ

けのシンプルなスタイル。それでも一生懸命毎日を過ごしていた。そんなあ

る日、もうそろそろ主人が帰宅するだろうと、夕食は主人の好きなカレイの煮

付けを作り、なかなか帰宅しない主人より先に子供に食べさせて寝かし付け

た。でも、待てど暮らせど戻って来ない主人。「電話ぐらいかけてくれたって

・・・」気持ち穏やかでなく、普段気にならない秒針の音が、いやに気になっ

たりしていた。何度も何度も時計を見て・・・でもその間も内職の手は緩めず

に、ひとつ作っては子供の為と頑張っていた。

 もう時計は”明日”を指そうとしているのにまだ主人は帰らない。私は寝るタ

イミングを逃してしまい、ラジオから流れる取り止めもない話しを聞くとはなし

に聞いていた。

 夜中の3時・・・玄関で物音がして、恐る恐る出て行くとヨレヨレの主人が倒

れこむ様にドアから入ってきた。「あらあら、御機嫌ね」と声をかける私を押し

のける様に、そのままベッドへと身体を横たえてしまった。布団を掛けて、そ

の場を離れ様とした時、主人は私の首に両手を回し「さゆり〜」と・・・。ん?

私の名前は山本 直子<な・お・こ!!>で、誰?さゆりって誰???。そ

ういえば、最近主人は会社の付き合いだと称して、帰宅時間が遅くなって朝

帰りも増えていたっけ。「もしかして・・・」私は主人の耳元で「そろそろ家に帰

らなきゃいけないんじゃな〜い?」と、甘い声で囁いてみた。そしたら主人は

「あ、もうそんな時間?はいはい」と置きあがってきて目をパチクリ!!「ふふ

ふ・・・罠に嵌ったわね・・・」主人は平静を装って「あ、ゆ・ゆ・夢をみてたみ

たい♪」などと言った。が、しかし、言葉が上擦っているのを聞き逃さなかっ

た私。

 何か言ってやろうと思ったけど、さっきの強気はどこへやら。なんだか涙が

次から次へと頬を流れる。悔しい、悲しい、腹立たしい・・・。「こんなに頑張

っているのに、あなたって裏切ったのよね」そう言うのが精一杯。その涙を見

て主人は「ごめん・・・」と小さな声を発した。黙っている私に主人は開き直り

ともとれる言葉を連発。「考えてもみろよ、お前はいつも頑張ってる。頑張っ

てるけど、それは俺にじゃなく子供にだろ。少なくとも結婚する前まではオシ

ャレもしてたし、化粧だってしてたよな。近頃のお前ときたら、色気もなんにも

ないタダのおばさんじゃないか!俺が浮気する気持ちだって少しは解れよな

!!」この言葉は私の胸をドリルで容赦なくえぐるような痛みを残した。その

場にいたたまれずに私は家を飛び出し、近くの公園へ逃げる様に行き、思

いっきり大声で泣いた。

 「こんなに頑張って来たのに。一生懸命頑張ったのに!人の気持ちを解っ

てないのは一体どっちよーーー!!」人目も気にせず泣いた。


 どれだけの時間が過ぎたのだろう・・・辺りは薄っすらと明るくなっていた。泣

くだけ泣いたら、なんだか泣いていることがバカらしくなって、あんな人の為に

泣いていることが悔しくなって・・・。そこで気がついた。「よーーっし!浮気相

手よりも断然綺麗になってやる!!そしてあの人を見返してやるんだ!!や

っぱりお前が1番だよ♪って言わしてやるぞ!」そう思ったら、なんだか元気に

なってきて、ベンチから立ち上がって足早に家に帰って洗面所に飛び込み、

歯を磨き出した。寝てない体にミントの香りが爽やかさを添えて頭をハッキリさ

せてくれる。そして、何度も何度も丁寧に顔を洗った。タオルで拭いたその顔

を鏡に映して見ると、主人の言った言葉が蘇って来た。「色気もなんにもない

タダのおばさん」・・・そうかも知れない。今の私の顔は顔色もなく頬にいくつか

のシミさえ出きていた。これじゃダメだよね・・・。今日、子供達を保育園に出し

たら、少しオシャレして街に出て、明るい色の服を買って主人の帰りを待って

いよう。そう決めて、朝食のハムエッグを焼きはじめた。「過ぎたことはもういい

わ。私は今日から変わるの。子供も主人も自分自身も大切にして生きる。自分

の為に!!」

 さっきまでの曇り空はどこへやら。秋の陽射しが部屋を優しく明るく照らし私の

人生の<新しい今日>を始めるのだ。

**************************

平成16年11月07日(月) P-SAPHIRE:作



*- HOME -*