ひとり
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春雨が ポツポツと
細い筋を引くように窓を流れる

私は机の上に肘をつき
幾つもの筋を見送る

春雨はあたたかで
アイスティーの氷をじんわり融かし
汗をかいたグラスの中で
積まれた氷は カランと音をたてて崩れる

春雨が鈍色の霞を呼び
ブリキのオモチャ色した街並みを
黄泉の国へと誘う(いざなう)ように
全てを覆い隠す

私はひとり
取り残されて
ただ
傍観だけを許される







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05.04.12 P-SAPHIRE


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